スピーカー選びと使いこなし(後編) (99/9/5 記)
 

この文章は、スピーカー選びと使いこなし(前編) の続編です。
まだ読んでいない人は、先に、そちらを読んでください。

今度は使いこなし編です。 16 cm クラス以下の小さい口径のスピーカーの場合、その魅力は、充実した中域にあります。 ドイツリートなどの歌曲が、明瞭度が高く、実在感をもって表現されることでしょう。 それを生かさない手はありません。 最初にすべきことは、リスニングポジションに座って、耳の高さと、スピーカーの高さを合わせることです。 なぜ、そうすることが大切なのかは、スピーカー選びと使いこなし(前編) を読んでいれば、おわかりですね。

次に、チェックすべき点は、スピーカーと壁面との距離の調節です。 低音の質感が変わることがわかるかと思います。 低音の量感が増えるのは、スピーカーを壁面に近づけたときですが、低音域(100 - 200 Hz あたり)の量感が増えすぎると、こもった感じに聞こえます。 ここでは、量感より質感重視でいったほうが、うまくいくことが多いようです。 具体的には、ドイツリートなどの歌曲、ピアノ曲、室内楽曲を聞きながら、調整していくと、わかりやすいでしょう。 低音域の量感が増えすぎると、中高域がこもった感じになってくるので、この手の曲の方が、バランスが取りやすいようです。

これらの小型スピーカーの場合、低音の量感と質感との両方を追い求めることは難しいように思います。 私のお勧めは、質感を重視してセッティングし、スーパーウーファを追加することです。 スーパーウーファとしては、ヤマハから、いろいろなシステムが出ています。 部屋が狭い場合には、あまり大きなスーパーウーファを用意しても、置き場所をとるだけで、なかなかうまくいきません。 このような場合には、むしろ AV システム用に売られているスーパーウーファを、うまく使いこなしたほうが、良いようです。 例えば、Yamaha WST-SW160 あたりが使い勝手がよさそうです。 スーパーウーファをうまく使うコツは、いかにもドンドン・ブンブンとスーパーウーファが鳴ってますという感じにせずに、とにかく控えめに使うことです。 なお、スーパーウーファは左右を分けずに一本で十分でしょう。

25 cm 以上のクラスの場合は、スピーカーの高さの調節は、低音の量感に直接かかわることが多いので、必ずしも中域を出しているスピーカーユニットと耳の高さを合わせることは難しいでしょう。 逆に言えば、それゆえ、ある程度、スピーカーとリスニングポイントとの距離が必要なことになります。 スピーカー台を低くすれば、低音の量感が増し、高くすれば、逆に低音が締まります。 この高さの調節と、後面などの壁面との距離の調節も必要です。 小型スピーカーの場合と同様に、スーパーウーファーを利用するのも手ですが、この場合は、中途半端なスーパーウーファーは意味をなしません。 ヤマハのスーパーウーファーシリーズなら、YST-500SW, -1000SW といった本格的なスーパーウーファーが必要です。 なお、比較的スピーカーから近距離で聴取する場合には、スピーカー正面がリスニングポイントを向くように、内側に向けることも考えてください。

忘れていました。 スピーカーの調整の前に、やっておくことがありました。 それは、リスニングポイントで、ポンと拍手してみることです。 お風呂場や銭湯で拍手したときのような残響が残るようなら、定在波が存在していて、その場所で響いていると考えられます。 定在波とは、その空間での共振だと思ってください。 これは、あまりうれしいことではありません。 リスニングポイントだけでかまいませんから、じゅうたんをひくとか、座椅子をおくとかして、床面と天井の共振を取り除いてください。 

次に、トゥイター(高音用)やスコーカー(中音用)のレベル調整をしなければなりません。 これらも、聴感で決めてよいのですが、いろいろ迷うのが普通です。 調整法のひとつは、人の声の再生で調整する方法です。 聞き慣れている人の声を録音再生して、確認する方法です。 彼女(彼氏)の声とか、愛娘(爆笑)の声がいいでしょう。 適当な録音装置がなければ、演奏会などで聴いたことがある声楽家の CD/LP でもかまいません。 もちろん、ホワイトノイズを再生して、前編で利用した簡易測定器での測定結果を利用することも可能です。 これは非常に役立ちますが、下手をすると、ホワイトノイズでトゥイターを壊すことになりかねません。 ここで簡単に書いた説明だけで、わかる人向けでしょう。

最後にもうひとつ。 新品のスピーカーにせよ、中古のスピーカーにせよ、購入してセッティングする前に、少なくとも1時間ぐらいは、FM でも鳴らして、十分にウォーミングアップしてから、セッティングしましょう。 また夏場や冬場などは、搬送途中の外気にスピーカーが触れていたため、温度が異なっています。 スピーカーが室温に達してから、ウォーミングアップを始めましょう。 長く使う相棒ですから、いたわってあげてください。

(to be continued...)

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