Rogers Studio 7 との出会い (99/1/31 記)
 

原音再生 なんて 幻想 だ!
 

さて、ピアノに JBL サブシステムを乗っ取られたので(陰の声:それが目的でピアノを買ったんじゃないの?)、当然ながら、サブシステム用のスピーカー購入が急務となった。 手持ちは、QUAD, JBL なので、当然、それ以外のメーカーからの選択が妥当だ。 スピーカーが、そのシステムの音質を、おおよそ方向づけるのはよく知られたことだ。 私は、原音再生なんて、幻想だと思っているので、いろいろな傾向をもつシステムがあった方がよいと考えているからだ。

原音再生とは何なのか? そもそも原音とは存在し得るのか?
とあるサイトで、ホールの場所によって音が変わるので、原音再生なんて幻想だという論に対して、それならホールの中央前列の音を原音と定義すれば良いと、原音再生派が強弁されておられた。 原音再生派の幻想も、ここまでくると、私にはただの滑稽な喜劇である。 私自身は、同じホールでも、演奏の種類によって、異なる席を選ぶのを常にしている。 例えば、オーケストラであれば、ホールのほぼ中央よりやや後方。 室内楽ならほぼ中央よりやや前方。 ピアノであれば、中央は避けて、少し側方にずれる。 ピアノの反響版からの直射音は単調で、つまらなく聞こえるからである。 このように席を選ばないと、心地よい音が得られないのである。 こんなことは、クラシック音楽聴きには常識なのだが、オーディオ評論家にはわかっていないらしい。 ホールの中央前列の音をオーディオ再生の目標にされたら、どんな音が聞こえるのであろうか? もちろん、そんなデリカシーの欠けた音を聞くのはごめんこうむりたい。

原音を横に用意して、その都度比較しながら再生音を評価すると、記憶の曖昧さがなくなって飛躍的に精度は向上する。これが「原音比較法」である。その例を挙げてみよう。 一番簡単なのは直流の掛かっていない場所の結合コンデンサーである。短い銅線でショートした時の音を原音として、コンデンサーを通した音を「そのコンデンサーの音」と評価すれば良い。小生が何度か実施したコンデンサーの音質評価はこの方法である。
とあるサイトより引用
これは、一見正しい論法のように見えて、実は、何の意味もない方法である。 ちょっと電気に詳しい方なら、すぐにおわかりいただけると思うが、直流がかかっていないところに、何故に結合コンデンサーをいれる必要があるのか? そんなところにコンデンサをいれて、音質の評価になるのか? 結合コンデンサは、そもそも直流電圧がかかっているところにおかれるものであり、直流がかかっているときと、かかっていないときでは、そのコンデンサの音質が異なるというのは、良く知られた話である。 OS コンなんかは、そういう状況でないと、正常に動作できないことが良く知られている。 そもそも直流がかかっていたら、導線でショートしたら、電気的に回路が正しく動作しなくなってしまう。 この意味で、上記の「原音比較法」というのは、ただのまやかしに過ぎないように私には思える。 文句があるなら、私を論破して欲しいし、加えて、トランジスタなどの増幅素子の「原音比較法」をどうやって実現するのかも説明して欲しいものだ。 上記の原音再生論は、MJ「無線の実験」にも執筆なさっている方のページにからの引用であるが、よりよい音楽を聴きたい、一介のオーディオファンの私から見てさえも、論点があやふやで、議論に耐えないレベルに思える。(ご意見大歓迎! 掲示板で議論しましょう。) かくいう私自身も、20 年前は、原音再生という錦の旗をふりかざしていたものであるが・・・。

閑話休題。 本論に戻る。 わたしの今回の選択は、使用場所から、20 cm 2 way 程度に限られた。 幅 30 cm 奥行き 45 cm 程度が限界である。 日本製では、Victor SX-V1X あたり、アメリカ製では、Infinity ヨーロッパだと、B&W CDM-1SE あたり、Rogers, KEF, Harbeth, Spendor, Tannoy と留まるところを知らない。 Tannoy, Infinity あたりが当初の本命(QUAD ESL-63 との出会い(前編)を参照)だったのだが、ともに、大きさの制限から脱落。 B&W CDM-1SE は、振興オーディオの店員のお勧め品で、試聴させていただいた。 確かに、端正なまとまりの良い音で、ニュートラルな感じがある。 最近、B&W に興味ひかれる人が多いのもわかるような気がする。 一台目のスピーカーなら、これを購入したかもしれない。 しかし、今回は、より個性的な音を求める意味でパス。 むしろ、Rogers などの LS 3/5A や Victor SX-V1X に、より大きな魅力を感じた。 使いこなしは若干難しそうだが、人の声が艶やかに聞こえる傾向があるスピーカーたちだ。 オールマイティとはいえないかもしれないが、Quad や JBL とは、明らかに異なる個性といえる。

こんな経緯から、Rogers, Spendor, KEF といった、BBC Monitor Speaker の系譜をひくスピーカーから、今回は選ぶことにした。 これらのスピーカーは、どちらかというと、きらびやかな中高域が目立つ傾向がある。 その中から、置き場所の制限を考えて、もっとも大きなスピーカーを選択することにした。 エンクロージャーが、ユニットに対して大きければ、低音の余裕を感じることが多いので、どちらかというと高音が勝りがちな、これらのスピーカー群ではエンクロージャーが大きい方が良いだろうと考えたからだ。 Rogers Studio 7 を選んだのは、そうした理由からだ。

自宅に来た Rogers Studio 7 は、思ったより大きめであったが、もちろん、うまく設置できるぎりぎりの大きさである。 最初は、JBL Subsystem 用の A-Class 10 W x 2 の自作アンプで駆動したが、全く歯が立たない。 うるさいだけで、聴いていられない。 次に、Quad 44 + 405 のお出ましだ。 温和な音の Quad なので大丈夫だろうと思ったところ、全く駄目で、やかましい音のままだ。 そうなれば、管球アンプのお出ましである。 6G-A4 シングルで鳴らしてみる。 中高域のエネルギー感が勝る音ではあるが、トランジスタアンプと異なり、しなやかさが加わって、ここちよく聞こえる。 無帰還の方が、低音のはずむような感じがして心地よい。 Rogers E-20a / 40a という純正組み合わせが、6L6 のプッシュプルアンプであることを考えると、ダンピング・ファクタがやや低めのほうが、このスピーカーにお似合いなのかもしれない。

このスピーカーの特質は、なんといっても、人の声の明瞭度が高く、かつ美しく響くことだ。 QuadJBL では、こんなふうに鳴り響くことはない。 私の大好きな Elly Ameling が、とても美しく聞こえる。 さよならコンサートの時の感動がよみがえるようだ。 Fischer Dieskau Peter Schreier の録音も、とても美しく聞こえる。 これまで、生を聞いて満足していても、LP/CD では、今一つの録音だと思っていた人たちである。 これまでの私のところの再生装置では、コンサートの感激を再現してもらえなかった。 しかし、この Rogers Studio 7 なら、感激が再現される! オーディオ的に言うと、リラクセーションの表現が得意だということになるのだろう。 私自身は、こういう良いリラクセーションのある音を、TADJBL や、ましてや、レイ・オーディオ のスピーカーから聞いたことがない。 (これらのスピーカーは、求めるところが違うわけだ! というのが私の意見だ。) Rogers Studio 7 は、アンプをかなり選ぶものの、私にとっては、良いスピーカーと言えるだろう。 低域のボリューム感がもう少し欲しいが、エージングがすすめば、バランスが取れてくることを期待したい。

追伸

(99/2/28 記)

先日、Y氏のお宅におじゃまして、マルチアンプシステムによる JBL 4 way の自作システムを試聴させていただいた。 Y氏のシステムは、一般的な JBL らしい音から一歩も二歩も抜け出たナチュラルな音質であった。 ブラインドで聴かせられたら、JBL のホーンスピーカーが使われているとは、とても思えない(これは、もちろん褒め言葉です。)音でした。 JBL から、あれほどニュートラルな音を聴いたのは初めての体験でした。 まだ、チューニングの途中なそうで、さらにチューニングを進めれば、リラクセーションの表現は、さらに向上すると思いました。 よって、上の段落の JBL には、横線をひきました。 脱帽。

(to be continued...)

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